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高校校長だより 4月特別号 入学式式辞(高校)

日常の風景

 平成28年度 入学式 式 辞(高校) 

 本日、多数のご来賓の方々をお迎えし、平成28年度 誠心学園 浜松開誠館高等学校第19回入学式を挙行できましたこと厚くお礼申しあげます。

 保護者の皆様、ご子女のご入学おめでとうございます。新入生のみなさん、入学おめでとうございます。

 入学式に当たり、本校の平成28年度の教育宣言である「体罰といじめの根絶・笑顔がはじける徳育の浜松開誠館」に関連して、『言葉の大切さ』について2つの話をします。

1つ目は、平光雄著の『子どもたちが身を乗り出して聴く道徳の話』の1つを紹介します。これは小学生を対象にした道徳の授業です。

『ナイフは肉を切り、言葉は心を切る』ということです。ナイフで肉が切れないと困りますが、言葉で、相手の心を切って傷つけてしまうことがあっては問題です。しかもこれが無自覚に切るということになると、もっと問題です。おおよそ、言った方は忘れがちで、切られた方は忘れられない。また、長く残ることも少なくありません。

平先生は、次のように言っておられます。「怖いものだという自覚が大切です。言葉は便利なものです。無制限に使えるものだけど、怖いものでもあります。だから、ナイフを慎重に扱うように、切る前に切る場所を確認するように、言葉を発する前にちょっとだけ『大丈夫かな』と確認するような癖をつけていきたい。それが他人への配慮と言うことです。ナイフは肉を切り、言葉は心を切る。よく覚えておいてください」と。

 2つ目は、『ぼくの命は言葉とともにある』の著者である福島智さんのことが、以前の『毎日新聞』コラム「余録」で以下のように取り上げていましたので、紹介させていただきます。

 月を見たことがある。夏の夜、金色の光輝を放つ円盤は、やけに明るく感じられた。宇宙はすぐそばに、手の届くところにある。そんな感覚が身の内にわき上がった、盲ろうという障がいを持ち、初めて東京大学教授になった福島智(ふくしま・さとし)さんは近著「ぼくの命は言葉とともにある」で語る。光と音を失った高校生のころ、自分が地球上から引きはがされ、光のない真空の世界に投げ込まれたように感じたという。見えない、聞こえない人となって福島さんは学友のもとに戻ってきた。過酷な運命に直面している福島さんの手のひらに、友人の一人が指先で書いた。「しさくは、きみのためにある」。思索。その時から言葉は新しい意味を帯びて福島さんの前に立ち現れた。実際には、母の発明した指点字によって福島さんは社会とのつながりを 再び手に入れた。

 ニューヨークのイタリア料理店で4時間以上、福島さんと語り合った。酔いながら指点字の通訳者を介して縦横無尽に話す。少し甲高い声に神々しさすら感じたものだ。言葉には思いもよらぬ力が潜んでいる。ささいな言葉の行き違いから、人間関係がすさむことさえある。中高生に人気の無料通信アプリLINEでのいじめは深刻だ。いじめる側は軽い気持ちでも、深く傷つき、自殺に追い込まれた中学生もいる。

 盲ろうとは宇宙に1人で漂っているようなものだと福島さんは言う。真空に浮かんだ自分をつなぎとめているのが言葉、他者とのコミュニケーションだ。「私の魂に命を吹き込んでくれたのも言葉だった」。 

 福島さんの言葉を皆さんに届けました。

 言葉の大切さについて、少し考えたり、気をつけたりしてみてはどうでしょう。また、友達同士やご家庭で話し合ってみてはどうでしょうか。

 

 

 最後に、新入生の皆さん、入学式を迎えられたことを保護者・友人・先輩たちに「ありがとうございました」と言葉で感謝を伝えてください。

以上を持ちまして、式辞とします。

平成28年4月8日

誠心学園 浜松開誠館高等学校

校 長 中西 孝徳

 

*しさく【思索】( 名 )スル  筋道を立てて深く考えること。「 -にふける」 「静かに-する」

「思索」に似た言葉   考える思い見る検討潜考考慮  三省堂 大辞林

*福島智 東京大学教授 研究「バリアフリー」 アメリカ国立ヘレンケラーセンターに留学

 

 

*時間の都合上、お話ができなかったことを追記しました。

*誠心学園浜松開誠館では、今年度を「未来戦略」始動元年として、100周年に向け て行っていくことを簡単に紹介します。

 ① 徳育の3段目として社会人基礎力(協働性)を育成するために「クエストエデュケーション」を

   高校2年生で行います。

 ② 専任講師として英語のネイティブの先生をお招きし、普段から英語に接する機会を増やします。

 ③ 土曜日講習の1つとしてベルリッツによる英会話教室を希望制で開設します。

 ④ 平成29年度の高校2年で、進学コースの中に「グローバル系」を開設します。その準備を今年

   は行います。

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